大好きな地下セクシーアイドル「ベッド・イン」が The New York Timesに取り上げられたので全文和訳した
目次
- 1.ニューヨークタイムズにベッド・インが取り上げられた夜のこと
- 2.New York Times "Bright Lights, Big Shoulder Pads : A Timid Japan Recalls Its Bubble Era"の和訳
- 3.この記事について思うこと
1.ニューヨークタイムズにベッド・インが取り上げられた夜のこと
昨晩、ベッド・イン事務局(@1919bed)さんがこんなツイートを発射した。
【ニューヨークタイムズ情報‼️】
— ベッド・イン事務局 (@1919bed) 2018年4月6日
先日ニューヨークタイムズさんの取材を受けました。
本日、サイトに掲載されました。
PUFFYさんや大谷翔平さん、松山英樹さん、イチローさんのように米国でも活躍したいですね。 https://t.co/GmVRFc91sI
私が今推しに推している地下セクシーアイドル「ベッド・イン」。この、バブル時代をフィーチャーした出で立ちと、スレスレな下ネタ・バブルネタを隙あらば挿入してくるトーク、そしてロックで培った歌唱力が悪魔合体したゲロマブなお二人が、The New York Timesに取り上げられたというのである。
ほんまや。
しがない性徒諸君(ベッド・インのファンの総称)であるところの私は興奮した。もうやまだかつてないほど心が沸き立った。関西人でもないのに関西弁が出るくらいだ。そして、気付いたときにはこの記事を全部和訳してTwitterにアップしていた。
ベッド・インがニューヨークタイムズで取り上げられた記事、やっつけだけど全文和訳しました。1ツイートで載せきれないので次に続きます。#ベッド・インhttps://t.co/qlynfrHjkP pic.twitter.com/82z7Uvywn7
— 活字に狂ったななめちゃん (@saka7me) 2018年4月6日
ニューヨーク・タイムズでベッド・インが取り上げられた記事の和訳その2です。間違ってるところもあると思うので、その辺りは良い感じに直して……!#ベッド・イン pic.twitter.com/eZP9eDLbWt
— 活字に狂ったななめちゃん (@saka7me) 2018年4月6日
でも、Wordの画面のスクリーンショットはさすがにやっぱり読みにくい。というわけで、昨日上げた和訳文を、明らかな誤字脱字の修正をした上でブログにもアップすることにした。
間違っているところもあるだろうし、自分でもうまく訳せなかったなあと思うところもある。あと、なんかたぶん元ネタがあるんだろうけど分からんな、というところもある。そういうのを見つけたら、コメントやTwitterへのリプライなんかで優しく教えてもらえると嬉しいです。
2.New York Times "Bright Lights, Big Shoulder Pads : A Timid Japan Recalls Its Bubble Era"の和訳
まばゆい光、大きな肩パッド:自信を失った日本はバブルの時代を思い返す
(写真)
益子寺かおり(左)と中尊寺まいのデュオ、ベッド・インのド派手な服装とバブリーな音楽は、日本の1980年代の経済的熱狂に対する懐古趣味的な再評価の一部だ。
マリ・サイトウ
2018年4月6日
東京――益子寺かおりはうっすらと思い出す。子どものころ、母(彼女の髪は逆立てられ、唇は真っ赤に塗られている)と一緒に家族のオープンカーに乗ってビーチに行ったときのことを。それは1980年代、シャンパンとけばけばしい色彩、ディスコのダンスフロアに流れる陽気な(bubblyな)音楽の時代、そして日本の人々が豊かさと右肩上がりの感覚を持っていられた最後の時代の末も末のことだった。
家族のオープンカーと海辺でのバケーションは、いわゆる失われた10年、そして長い経済的な停滞の時代を経て遠く過ぎ去った。しかし、益子寺は日本のバブル時代を呼び戻すのに一役買っている。彼女は重厚なキーボードの旋律、そして80年代風の電撃的なドラムと力強い弦楽器を引き連れたポップ・ミュージック・デュオ「ベッド・イン」で歌っている。彼女たちは80年代風の衣装を身に着けてもいる。その肩パッドは大きく、スカートはミニで、その色合いは、彼女たちが輝いていないときにはただ安っぽく派手に見える。
「2,3年前までは、バブルの時代を負の遺産として捉えている人がほとんどで、バブルはとてもダサいと思われていました」と、東京の夜景が派手な色彩で描かれた模様の、肩パッドの張り出したタイトなジャケットと、ジャケットと揃いのミニスカート、そして金のジュエリーを身に着けた益子寺(32)は語った。
「それはここ2,3年で完全に変わったんです」。彼女はそう付け加えた。「今や、皆バブルをイケてる時代だと思っています」。
(「Tokyo」の写真)
ベッド・インの2017年のアルバム「Tokyo」。このバンドは1980年代風の重厚なキーボード・ラインと刺激的なドラム、そして力強いギターとベースを連れている。
日本はここ数十年で最も好況の時にいる。経済は右肩上がり、そして企業はどんどん足りなくなる労働者を奪い合っている。今なお、日本の多くの人々にとって、下線部(の文章で書いてあること)ははるか遠く、日本は1980年代の高みから転落したままだ――給与はほとんど上がらず、人口は高齢化し縮小している。そしてほとんどの日本人は、日本の最も良い時代は終わってしまったと感じている。
その感覚は、日本が何の疑問もなく世界の頂点にいた昔の日々に対するノスタルジアに火をつける。80年代を再評価する世界的な動きに参加する形で。
ベッド・インのファッションは、日本国内の雑誌の中で確固たるものとなった。80年代風の豪華な衣装は、ヴォーグの日本版のような、光沢紙を使った雑誌の中で大きく取り上げられるようになった。人気芸人の平野ノラは、ボクシータイプの(ビッグシルエットの)スーツとレンガのブロックくらいある携帯電話でこの時代のモノマネをして人気になった。彼女の服装は昨年のハロウィンのコスチュームで大人気だった。
そして、マハラジャだ。30年以上前に類似のクラブのブームの火付け役となったディスコ・チェーンであるマハラジャが、ここ5年ほどで日本中に再オープンし、懐古趣味のベビーブーム世代と、好奇心旺盛なミレニアル世代、そしてぶっ飛んだ観光客のニーズを満たしている。
(写真)
イベント企画会社アニプラの社長であるタナカアヤコは、プリンセス・パーティとして知られるこれらをワイルドなリムジンに乗せて、東京の通りを走り抜ける。
たくさんの日本人の若者が、かっこいいリムジンに乗って東京の通りを走り抜けるようにして、この時代を再演する。とあるイベント企画会社によってプリンセス・パーティと呼ばれているそれらは、あまりお金のない若い女性に、彼女たちの母親が別の時代にしていたかもしれないようなやり方で、ドレスアップして街をドライブするチャンスを提供することを狙いとしている。
「私はフルタイムで働き始める前に、これをしたいと思っていました」とスギタミレイ(20)は言う。この夜に出発する前に、彼女の長い髪は巻かれていて、頭のてっぺんにティアラが載せられている。「私達はこんな豪華なことは決してしません」。
この80年代風の派手な消費と、現代におけるそうした消費の不足(現代ではそんな派手な消費がされていないこと)は、この二つの時代が決定的に異なっていることを強調する。
バブルの時代、男性は車で女性を高価なデートに誘い、若者は大挙してスキーリゾートあるいは海外旅行へと出かけていた。東京では、夜にタクシーを捕まえることが困難で、人々は1万円札――今の価値にすると100ドル――をひらひらさせて運転手の注意を引こうとした。
(写真)
ミチグアヤメ(左)とスギタミレイは先月東京でプリンセス・パーティの準備をしていた。このパーティはあまりお金のない若い女性に、彼女たちの母親が別の時代にしていたかもしれないようなやり方で、ドレスアップして街をドライブするチャンスを提供することを狙いとしている。
「それはもっと大らかな時代だったように思うんです」と、ベッド・インのもう一人のメンバーである中尊寺まい(30)は、彼女の母親が「楽しすぎたから」当時のことをあまり覚えていないと言っていたことを思い返して語った。
「今の若者は、安定した生活のためにミスをしてはいけないんだ、というプレッシャーをもっとずっと強く感じています」と中尊寺は言った。
好景気は、今も断続的に続いているプロセスである、日本女性の社会進出を描く一助となった。ベッド・インの最新動画は、「トレンディ・ドラマ」を模すことでこの時代を肯定している。トレンディ・ドラマはバブル期のテレビ番組の一ジャンルで、日本の若いキャリア・ウーマンの忙しい日常を描いたものだ。
(シティ・ガールは忙しい の埋め込み)
ベッド・インの動画は、働く女性の忙しい日常にフォーカスした1980年代の日本のテレビ・ショーへのオマージュだ。
あの時代は急に終わりを告げた。日本の株式市場は1990年に崩壊し、不動産価格も急下落した。あの後に続いたのは失われた十年と呼ばれる時代で、日本は下落する株価と、緩慢な経済成長、そして重すぎる借金との苦闘を強いられた。
(写真)
ミチグ氏(中央)と彼女の友人たちは、彼女たちのプリンセス・パーティのためにリムジンから降りようとしている。
日本の世帯が消費する所得は今や80年代よりも下がっている。その一因は、上がらない給与と、将来への不安だ。政府は消費者が財布の紐を緩めるよう努力を続けている。昨年、政府は「プレミアム・フライデー」を導入した。これは、毎月最終金曜日には企業が社員を早く帰らせ、彼らがショッピングに余計に時間を使えるようにすることで、経済に貢献することを奨励するプログラムだ。
2017年の、第一生命研究所(生命保険会社が出資している研究グループ)によるある研究によれば、若者の大多数は、将来への不安から消費に消極的だという。だいたい40代から50代の人々が20代の頃には、彼らは安定した生活をほぼ確実な未来として欲していたが、給与が上がらず、多くの人々が非正規で働くこの国では、それは見つけるのが難しいものになってしまった。
「最近の若者は、不安定な時代を生きて来たがゆえに不安を感じています」と、博報堂で若者文化を研究するチームのリーダーをしているハラダヨウヘイは言った。「それが、多くの人々が安定を求め、公務員が人気の職になった理由です」。
高校生のあるグループが、昨年、バブル時代の自信をこの臆病な時代に持ち込んで日本中の関心を集めた。ケチ臭い店と彼女たちの親のクローゼットを襲撃して、40人の女子高生は、1985年のディスコ・ヒットである「ダンシング・ヒーロー」によって、国のダンス大会で2位を勝ち取るのに十分な量のパワー・スーツを見つけ出した。この動画は5千万回以上再生された。
(動画埋め込み)
大阪の富岡高校ダンス部はこの1980年代の音楽と服装をフィーチャーしたバイラルな動画を作製した。
(写真)
リムジンの運転手が彼の仲間を待っている。強い経済力にも関わらず、日本政府は消費者にお金を使わせるようと苦闘している。
「私はあの頃に戻りたい。皆があまり不安がっていないように見えるあの頃に」と、ダンサーの一人であったメグロナナコ(18)は言った。彼女は最近、東京の250㎞西南にある大阪の富岡高校を卒業した。「当時の人たちはナンバーワンになりたがっていた。最近の人たちに較べると、皆がもっと自信をもっていたように見えます」。
若者が過ぎ去った時代の華々しさに張り合おうとするとき、彼らはそれをずっと限られた予算で行う。
最近のある夕暮れ、6人の大学生が、東京の上品な地域である西麻布で、カラフルなドレスのつまったラックを拾った。約60ドルを支払って、彼らはデザイナー・ドレスを借りて、1時間のプリンセス・パーティに参加するためのリムジンに乗り込んだ。
パーティのホストを務める会社であるアニプラは、リムジンのレンタルがここ数年で非常に一般的になったと語った。
リムジンを捕まえるために歩き出しながら、ミチグアヤメ(20)は言った。これは彼女たちが羽目を外してこんな体験をする「最初で最後の」ときなのだ、と。
「私はまだ、しっかりと自分の将来のことを考えていません。でも、私はもうすぐにでもそれを始めなくてはならないと分かっています」と彼女は言った。「両親は私に安定した職に就いてほしいと考えています。両親は、それがどんなに大切なことかを私に言い聞かせ続けています」
彼女たちに、この後クラブに行くか飲みに行くかしないの? と尋ねてみたところ、女性たちは首を横に振った。
「私、お腹が空いていて」と一人の女性が言った。「もしかしたら何か食べられるかもしれないけど、たぶん、まっすぐ家に帰らなきゃ」。
3.この記事について思うこと
訳してみて思ったのは、まず、「暗い……! 暗いよ……!」ということ。記事のタイトルからも分かるように、景気も悪くてゲロゲロよ*1状態が長らく続いて国民全員後ろ向きな日本が、Japan as No.1 の時代を懐かしんでいるからバブルのリバイバルが来ている、でもどう頑張ったって当時よりお金のない若者は悲しいよね、という論調の記事だった。
確かに、私達の世代(私は平成3年生まれだ)は、バブル崩壊の後に生まれ、高校生のころにリーマンショックがあって、就職活動の時期にもまだ社会がリーマンショックを引きずっていた。ぱーっとお金を使って楽しんじゃおう! どうせすぐに稼げるんだから! みたいな感覚を持ったことは一度もない。
プリンセス・パーティのくだりで女子大生たちが語る「最初で最後」という言葉も、すごくよくわかる。だって、働き始めたが最後、もういわゆる「社畜」として労働に明け暮れなくっちゃいけないんだ、それでも親世代より稼ぐことなんかできないし、楽しいことなんかもうないんだ、って、学生の頃は本当にそう思っていたから。
でも、最近になって思うのだ。私の未来、そこまで暗くないんじゃね、と。
日本は少子高齢化だし、お給料上がんないし、そのくせハチャメチャに税金と年金は取られるし、女性活躍とか言われてるけど社会は旧態依然としているし、仕事も彼氏もできないし*2、お先真っ暗どん底じゃん、という感じに思えるのだけれど、私はもう、逆の視点で考えてみることにしたのだ。――ここまでどうしようもないのなら、もう好きなことしたって良いんじゃない? だって、私には失うものなんて何にもないんだから!
ベッド・インのお二人、かおりさんとちゃんまいさんは、今みたいにバブルがブームになるずっと前から当時のVHSなんかを集めるくらい、バブルの時代の文化がお好きだったらしい。そして、ベッド・インとして売れる前から、仕事と両立する形で音楽活動を続けてこられた。お二人とも、好きなことを諦めず、そして、好きなことを好きと公言し形にする勇気を持っていたから、今こうして極彩色の花を咲かせることができているのだと思う。
今の日本の状況は、確かに暗い。でもそれは表面的なもので、実は、好きなことを形にすれば誰かがどこかで「いいね!」と言ってくれる、そんな環境ができているのではないだろうか。リアルでは言えなくても、SNSでならたくさん同好の士を見つけられることってザラにある。
私はベッド・インから、好きなことを諦めない勇気と、頑張れば楽しく自分らしく生きていけるんだという夢をもらった。ニューヨーク・タイムズの論調はどうにも暗かったけれど、ベッド・インが「スケベでデーハーな日本」を取り戻すのも、きっと時間の問題だ。だって、二人のおかげで、東京の片隅で暮らす二十代のOLが一人、ギラッギラな夢を抱くことができたし、そういう性徒諸君は日本全国にたっっっくさんいるはずだから。
~以下、ちょっと宣伝~
【2018年東名阪沖ツアー!】
— ベッド・イン事務局 (@1919bed) 2018年3月15日
3/13(火)~3/26(月)23:59迄 HPチケット先行受付中♥
ウチらの夏物語~Season2~
6/30 (土) 沖縄:桜坂セントラル
7/14 (土) 東京:新宿ReNY
7/18 (水) 大阪: MUSE
7/19 (木) 名古屋: ell FITS ALLhttps://t.co/QmJUlJLn9q
4/21(土) 一般発売
※FC先行は終了しました。 pic.twitter.com/1Ao9ZKcPJJ
ベッド・インの夏ツアー、これはもうパー券ゲットしておギグに行くしかないよね! 私は新宿と名古屋に参戦します!
ベッド・インの最新アルバム・「TOKYO」。最高に元気が出る。まだ聴いてない人は絶対聴いてほしい。